金融商品取引法の下での「開示すべき重要な不備」の開示は,必ずしも潜在的なリスクを伝達するものとはなっていないが,内部統制報告制度は,経営者の内部統制に対する責任の自覚と真摯な対応をもたらした点で,監査環境の向上に貢献している。
内部統制監査と財務諸表監査の一体化の推進は監査の有効性と効率性を高めるが,インダイレクト・アプローチの下では,経営者の内部統制の評価範囲や手法が一体化の制約条件となる。外部監査人は,そのような制約を解消するために経営者との緊密な調整を行っていかなければならない。
今後は,経営者が内部統制をアカウンタビリティの問題としてとらえ,実施基準の例示等にとらわれない企業毎の特性に応じた内部統制評価を行っていくことが期待される。このような取り組みは,外部監査人にとっても,企業の特性を踏まえた財務諸表監査と内部統制監査の一体的実施を通じて監査の有効性と効率性を高める契機となる。