2015 年 2015 巻 25 号 p. 162-170
今日の企業活動において,会計システムなどITを利用している企業は多数を占めている。公認会計士等における会計監査では,この状況を踏まえ,CAAT(Computer-assisted audit techniques)を利用するケースが増加している。母集団を試査によって推定するのではなく,精査(限定的精査)によって母集団自体を対象として評価することが可能となるとともに,試査によるサンプリングリスクの問題にも対処できる。また,実務では仕訳テストとして会計期間の仕訳の全データを電子媒体で入手し,検証することが多いが,これもCAATを活用しなければ実現することはできない。さらに,限定的精査の応用としての継続的監査やCAATの新しい適用手法としてのDual Trackingを導入することができれば,監査における早期化に一定の効果が図られるとともに,深度ある監査の実現にもつながると考える。但し,実務上での課題が存在するとともに,今後の発展を考えると制度面も含めた対応が必要となってくる。