監査のDX化は,被監査会社における会計のDX化を論理的前提とするが,監査のDX化はリアルタイム監査・継続的監査を可能とするかもしれず,その場合には,金融商品取引法上の規制の在り方に大きな影響を与えるかもしれない。また,リアルタイム監査等が可能となる前の段階においても,監査のDX化の下では,――紙ベースの調書についても十分な規律が加えられていないのかもしれないが――監査調書の改ざん防止・保存がより重要な法的課題となる。また,監査人の責任を合理的な範囲に限定するために,免責条項および責任制限条項ならびに補償契約を活用する必要が高まるかもしれない。さらに,AIを活用する場合には,機械学習のため,監査の過程で得た情報の利用のために,被監査会社の許諾を得る必要がありうるなどの課題も存在する。以上に加えて,監査のDX化は「一般に公正妥当と認められる監査に関する慣行」を変化させることになりうる。