2010 年 3 巻 p. 246-249
アナリストの個別銘柄の長期利益成長率予想は,過去の成長率に引きずられ,投資指標として有用性が低いと報告されている.本研究では,銘柄に対する最も強気な予想と最も弱気な予想も分析し,過去成長率の影響がどのように生じているか,さらなる検証を試みた.影響の仕方としては,過去の高成長が (1) 過度に強気な予想を発生させる,(2) 冷静な予想を減らす,(3) 等しく予想を強気にさせる,の3パターンが考えられる.(1) なら強気な予想ほど過去の成長率の影響が強く,(2) なら弱気な予想ほど影響が強く,(3) なら影響の違いは見られない.分析の結果,弱気予想に過去成長率への強い影響が認められ,かつ,弱気な予想ほど将来の成長率を予想する上で有用性が劣ることが分かった.従い,過去の成長率は冷静な予想を減らしてしまう様に影響を与えており,これは,その銘柄に対する弱気予想が,強気予想に比して,十分な情報·分析が伴っていないことが要因である可能性が高い事が分かった.