行動経済学
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第4回大会プロシーディングス
アンケートから見た消費者の不祥事意識の構造について—ステークホルダーとしての消費者への期待と消費者行動の問題—
杉浦 康之
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2010 年 3 巻 p. 250-261

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抄録

本稿では,消費者がステークホルダーとして,企業の効果的なガバナンス機能としての役割を果たせるのかを吟味するため,商品·サービスに対する,関心の高さ,消費行動の意識,不祥事に対する反応などについて,アンケートを行った.このアンケートを用いて,不祥事に対する反応がどのような意識から来るのかを検証した.
本サンプルの結果から,どの商品·サービスに対しても,過剰(過敏な反応や鈍感な反応)な反応を示す割合が低いことが確認された.また,過剰な反応を示すその要因について分析をしたところ,生活環境の悪い状態や生活環境が悪化しているときや,商品·サービスに対する関心が低いときに,不祥事に対して過敏に反応(不祥事を起こした商品·サービスだけでなく関連するものについても購入·利用を控える)する.他方,女性のうち,「安いものほど購入」しようと意識するときや,関心が高いときに,鈍感な反応(不祥事が起きても,購入·利用し続ける)を示すことが分かった.
さらに,女性については「安全性を意識」することで,男性については「商品名や企業名」を意識することにより,上記の過剰な反応を緩和する可能性がある.従って消費者によるガバナンス機能として,一定の成果を上げる可能性も示唆されるが,不祥事に対する対応が,興味や生活環境などが大きく起因するため,消費者教育によって,これらを克服することが課題となるであろう.

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© 2010 行動経済学会
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