抄録
食道癌手術後の一過性あるいは永続的反回神経麻痺によるquality of life悪化を予防するためにリンパ節郭清手技を修正した。神経周囲でのクリップの多用,右側の前頸筋群や右下甲状腺動脈の気管への分枝の温存などである。食道癌根治切除例で退院時に反回神経麻痺を認め,術後1年間disease freeであった128例を対象とした。郭清手技の変更前(1993年以前)の63例(グループA)と1994年以降の65例(グループB)に分け,術後のquality of lifeを比較した。全切除例に対する退院時の耳鼻科医による反回神経麻痺の頻度は両群とも40%台であった。術後1年目のpersistent vocal cord paralysisの頻度はグループA:57.1%に対し,グループB:24.6%に減少した。さらに,severe hoarsenessを訴えた症例はグループA;28.6%からグループB:3.1%に減少した。術後の反回神経麻痺に伴う嗄声は,愛護的郭清手技や栄養状態の改善により軽減できる。しかし,永続的麻痺の症例ではその麻痺が適切に治療されるまではquality of lifeが阻害される。