Journal of Applied Glycoscience
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ランダム変異を用いたStreptococcus mutans 由来 Sucrose Phosphorylaseの耐熱性の向上
藤井 和俊飯干 雅恵柳瀬 美千代鷹羽 武史栗木 隆
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2006 年 53 巻 2 号 p. 91-97

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抄録
Sucrose phosphorylase (SPase, EC 2.4.1.7) は,sucroseをglucose 1-phosphateとfructoseに加リン酸分解する酵素である.本酵素は,無機リン酸の定量,配糖体やオリゴ糖,アミロースの合成に利用できるが,産業利用に適した耐熱性をもつ酵素の報告例はない.産業利用において優れた耐熱性をもつSPaseを取得するために,Streptococcus mutans 由来のSPaseをコードする遺伝子にerror-prone PCRを用いてランダム変異を導入した.耐熱性の向上した変異酵素のスクリーニングには,glucan phosphorylaseを併用したsucroseからのアミロース合成を利用し,加熱後のSPase活性を合成されるアミロースをヨウ素呈色することで検出した.スクリーニングした結果,耐熱性の向上に寄与するアミノ酸置換八つ (T47S,S62P,V128L,K140M,Y77H,Q144R,N155S,D249G) を見出した.これらのアミノ酸置換を組み合わせることで本酵素の耐熱性は向上し,八つのアミノ酸置換全てを組み合わせた耐熱性酵素は,57℃で20分間の加熱では失活せず,60℃で20分間の加熱でも加熱前の60%以上の活性を維持していた.耐熱性酵素を含む菌体抽出液を20% sucrose存在下で65℃20分間加熱することで,簡便かつ迅速にアミロース合成に使用可能な酵素を調製できた.
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© 2006 by The Japanese Society of Applied Glycoscience
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