2021 年 72 巻 3 号 p. 138-144
喉頭気管分離術は比較的低侵襲な誤嚥防止術である。しかし,喉頭気管分離術の術後合併症のなかでも最も頻度の高い喉頭皮膚瘻に対して有効な対処法はほとんど報告されていない。今回,喉頭気管分離術後に生じた縫合不全に対して喉頭皮膚瘻を作製し,声門閉鎖術(鹿野法)により二期的に閉鎖した症例を経験したため報告する。症例は59歳男性,多発性脳梗塞後の嚥下障害のため嚥下性肺炎を繰り返していた。誤嚥防止手術として喉頭気管分離術(Lindeman変法)を行った。術後14日目に創部からの排膿と制御困難な出血を認め,全身麻酔下での止血術と創部処置を行った。吻合部は縫合不全により瘻孔となるも,感染により瘻孔の即時閉鎖は困難であったため,喉頭皮膚瘻を作製した。創部の感染が制御できた段階で,鹿野法により喉頭皮膚瘻を二期的に閉鎖した。喉頭皮膚瘻閉鎖後の経過は良好で早期退院が可能であった。本来,鹿野法は誤嚥防止術の術式の一つであるが,喉頭気管分離術の瘻孔閉鎖に対しても有用な術式と考えられた。