バイオメディカル・ファジィ・システム学会誌
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フルマラソンデータに見るシニアランナーの奇跡 マラソン力の提案とスケーリング則
中野 正博
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2017 年 19 巻 1 号 p. 29-36

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抄録

2015 年に全国で行われた77 のフルマラソン大会に出場した38 万人のフルマラソン完走記録を科学的視点から分析する.データにはさまざまな興味深い点が見られる.本論ではフルマラソンを走る個人の能力を強調して表す指標として「マラソン力」を提唱し,その計算式を示す.日本人全体でマラソン力の最も高い年代は30 歳である.マラソン力は年齢と共に徐々に低下するが80 歳まで,各年齢の1 位は全国平均の100 点を超えており,鍛えぬいたランナーは老齢でも肉体的な力が活発であることを示唆している.本論では,完走タイムの各年齢での割合と上位からの順位の割合がスケーリング則に従うことを指摘する.このスケーリング則は,シグモイド曲線で非常によく近似できるので,この逆関数を用いると,各年齢の1位の人の完走タイムが与えられれば,任意の年齢の任意の順位のランナーの完走タイムが予想できる.これを用いて各年齢の1位,10 位,50 位,100 位のランナーの完走タイムの予想曲線を計算した.ランナーの完走タイムのデータには,年齢と共に指数関数的低下が認められるが,この理由は競技者の数の減少によることを明らかにした.結論として,たとえ各個人のマラソンの完走タイムが2 次関数的な減衰であったとしても,集団としてみると,高齢の所で指数関数的減衰が認められることを示した.

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© 2017 Biomedical Fuzzy Systems Association
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