日本醸造協会誌
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解説
清酒の熟成に関与する香気成分およびその生成機構について(1)
―清酒の古酒の香りと老香
磯谷 敦子
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2009 年 104 巻 11 号 p. 847-857

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抄録

「ひね(陳・老成)」は,「ふるびている。老成している。」という意味で「ひねしょうが」や「ひね米」といった使い方がある。また,酒造りにおいては「老麹」,「老〓」などの表現があり「ひね」すなわち「悪い」ということではないと考えられる。しかし,清酒を貯蔵して生じる「老香」は劣化臭とされ,「老香」をださないように製造方法や貯蔵出荷管理方法に注意が払われてきた。老香は,これまで経験的知見から「よい老香と悪い老香がある」,「清酒を貯蔵しておくと1~2年は老香だが,長期貯蔵により好ましい熟成香に変わる」,「老香のでやすい酒(蔵)とでにくい酒(蔵)がある」などといわれていたが,複合香であり充分に解明されていなかった。
筆者は,最新の分析技術を駆使して,古酒の香りと老香成分の違い,また,老香中の不快な香りの主要成分さらにはその前駆物質の発見など,これからの清酒の品質向上において鍵となる研究をされた。そこで,2回にわたり詳細に解説していただいた。

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© 2009 公益財団法人 日本醸造協会
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