2010 年 105 巻 8 号 p. 507-511
二酸化チタンの光励起により発生する活性酸素種は,種々の有機化合物を酸化分解し無機化することから,セルフクーリング機能のある環境浄化材料としての利用が期待されている。このような二酸化チタンの反応機構は,有機物の集合体ともいえる微生物やウイルスの滅菌や殺菌にも有効である。二酸化チタンによる有機物処理は,高い有機物含有環境には不向きで,低濃度で有機物(あるいは細胞)を含む系において効果を発揮する。この場合,標的とする反応物(細胞)を二酸化チタン粒子近くに引き寄せるような工夫が重要となる。ここでは,このような観点からの二酸化チタン複合材料の調製とその利用について,筆者らの取組みの一端を解説いただいた。