2011 年 106 巻 10 号 p. 630-637
細胞のかたちを定量的に把握して,何がわかるのであろうか。筆者らは酵母のかたち,即ち外形や細胞内における構造体の状態を顕微鏡画像から数値化し定量的に解析する画期的な方法を開発した。この方法による非必須遺伝子破壊株表現型の網羅的な解析によって表現型と遺伝子機能との関係を明らかにすることが可能となり,さらに遺伝子機能を予想することができた。様々な分野への利用が考えられるが,醸造酵母への応用では発酵過程における発酵能のモニターや生理状態をとらえることによって酵母のかたちに基づく新しい原理による工程管理が可能である。さらに類似機能を持つ遺伝子の探索によって,有用酵母の効率的な育種も期待できる。