日本醸造協会誌
Online ISSN : 2186-4012
Print ISSN : 0914-7314
ISSN-L : 0914-7314
解説
清酒と原料米のフェノール酸関連化合物
橋爪 克己
著者情報
ジャーナル フリー

2015 年 110 巻 1 号 p. 2-7

詳細
抄録

 清酒には多数の苦味物質が含まれるが,大部分は閾値以下の濃度であり,単独で苦味を感じさせるものは少ない。著者らは以前,清酒のHPLC画分から呈味を手掛かりに苦味ペプチドを同定した。さらに最近,同様の方法で,フェルラ酸およびそのエチルエステルが強い苦味を呈することを見出した。フェルラ酸を含むフェノール酸は植物細胞壁の構成成分であり,清酒製造工程において麹の酵素によって遊離すると考えられている。本記事では,苦味物質としてのフェルラ酸等の同定,フェノール酸の原料米中の分布とその遊離に関わる麹菌酵素について,最新の研究成果をもとに解説いただいた。これらの苦味物質は特に活性炭未処理清酒で濃度が高く,近年増加している「無濾過」清酒の品質を考えるうえで,大変興味深い研究である。

著者関連情報
© 2015 公益財団法人 日本醸造協会
前の記事 次の記事
feedback
Top