日本醸造協会誌
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研究
出羽三山植物体からのアルコール発酵能を有する野生酵母の単離
藤野 舜一川邊 久之小室 真保
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2016 年 111 巻 11 号 p. 743-749

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抄録

1.出羽三山の12種の花から野生酵母484株を単離し,単離酵母のアルコール発酵能を調べた。しかしながら,ナギナタコウジュの花由来のTorulaspora delbrueckiiと同定された1株しか見出せず,花はアルコール発酵酵母の単離源としては不向きであった。
2.アルコール発酵能を有する野生酵母の植物体での単離源を検討する目的で,当校周辺の植物の花,葉,樹皮から野生酵母を単離し,アルコール発酵能を調べた。その結果,針葉樹,広葉樹を問わず,樹皮がアルコール発酵酵母の有用な単離源であることを初めて見出した。即ち,6種の樹木樹皮7検体を採取し,単離酵母50株のアルコール発酵能を調べたところ,50%に相当する25株がアルコール発酵能を有していた。
3.出羽三山の樹木6種の樹皮から261株の酵母を単離し,アルコール発酵能を調べた。その結果,23%に相当する61株がアルコール発酵能を示し,樹皮はアルコール発酵酵母の単離源として極めて有用であることが確認された。それぞれの樹木樹皮由来の代表19株を同定した結果,Lachancea thermotoleransLachancea meyersiiSaccharomyces paradoxusHanseniaspora vineaeTorulaspora delbrueckiiの5菌種であった。

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