2017 年 112 巻 6 号 p. 442-451
MBAの新梢伸長期に摘心とすべての花穂の切除を行い,得られた副梢果房の果実品質を評価し,さらには,副梢果房を原料とするワイン醸造におけるマストおよびワインの成分組成を明らかにした。2014年および2015年における摘心摘房処理区の開花,着色開始および収穫の時期は,対照区に比べて約1-1.5ヶ月遅かった。着色開始から収穫までの最高および最低気温の平均は,摘心摘房処理区が対照区と比較して6-7℃低かった。摘心摘房処理区の収穫時の果房重量は,対照区の55%程度であり,果粒径および果粒重量は小さかった。また,果皮に含まれるアントシアニンは2倍以上多く含まれた。さらに,副梢果房を原料としたワインは対照区のワインと比較して,色調が濃くfuraneol,γ-nonalactoneなどの香気成分を多く含んでいた。我が国のブドウ栽培とワイン醸造における温暖化対応技術の一つとして期待される。