2018 年 113 巻 9 号 p. 530-535
清酒造りに欠かすことのできない酵母が,最先端の寿命の研究に用いられていることを読者の皆様はご存知だろうか。酵母は,モデル生物として,シグナル伝達や代謝などのメカニズムの解明に貢献してきた。本稿では,著者らが独自に見出した「長寿」成分,S-アデノシルメチオニン(SAM)の発見の経緯が紹介されている。一方で,清酒酵母が他の酵母菌株と比較してSAMを高蓄積することも以前から知られており,そのメカニズムの解明が待たれていた。近年,この2種類の研究のターゲットが1つの遺伝子上に集約され,寿命と清酒酵母の謎の解明がドラスティックに進展しつつある。その流れを,読み応えのある解説記事にまとめていただいた。