平成29年における味噌の研究業績としては,微生物の新規酵素,遺伝子機能,ゲノム情報を活用した研究などが実施された。原料大豆,麦等の研究は基盤研究として実施されており,味噌原料としての大豆品種が開発され,今後味噌好適品種として品種登録が期待される。今年度は,味噌に好適な品種特性の解明研究の成果がまとめて発表されている。また,例年に引き続いて,機能性,おいしさに関する研究報告が活発に行われているが,単独の細胞代謝系や酵素反応に基づいた生理機能性研究から,個体,集団を対象としたよりレベルの高い研究に移行しつつあることが概観された。
味噌製品については,加工技術のみならず品質や機能性においても,科学的根拠に基づいた評価や研究情報の発信が強く求められることは言うまでもなく,基礎研究を確実に実施するために,より精密な分析技術や解析方法の活用が求められ,メタボローム解析研究が発表されている。
おいしさや食育からの味噌利用に関する研究は,単年度で完結するものではなく,継続して着実な実践研究が行われ,日本型食生活への回帰,若年層の健康を考えた発酵食品の重要性がより強く認識されている。機能性研究においてはヒト介入試験や疫学研究が求められるとともに,基礎研究において次第に研究成果が現れ,昨年度に引き続き多くの研究成果が報告されている。コホート研究データを解析した研究が広がりをみせた。味噌の役割は,健康と食品機能にくわえて,調理の面からも重要性が高く,近年注目されている海外展開に向けて,製造技術研究の進展が期待される。
国内における味噌関連研究は,成熟期を迎えているように見えるが,味噌の機能性に関連した臨床研究においてまとまった研究成果が発表されてきており,今後の研究成果に期待される。
抄録全体を表示