原料米産地のイネ登熟期の気温が清酒品質に及ぼす影響を明らかにするため,2009 BY~2018 BYの全国新酒鑑評会出品酒成分及び製造実績の年度ごとの平均値と原料米のイネ登熟期気温,蒸米消化性及びデンプン特性値との関係について相関解析した。原料米のイネ登熟期気温,兵庫県産山田錦のDSC糊化温度及び蒸米消化性は,粕歩合,最高ボーメ,出品酒のカプロン酸エチル濃度,グルコース濃度,日本酒度と高い相関関係がみられた。すなわち,イネ登熟期が涼しく原料米のアミロペクチン側鎖が短く溶解しやすかった年に出品酒のカプロン酸エチル濃度やグルコース濃度が高くなっていた。一方,酢酸イソアミル濃度,イソアミルアルコール濃度及び酢酸エチル濃度とイネ登熟期気温及び原料米デンプン特性との間には高い相関関係はみられなかった。以上から,イネ登熟期の気象条件が原料米のデンプンの性質及び溶解性を変化させ,大吟醸酒のカプロン酸エチル濃度に影響を及ぼす可能性が示唆された。