日本醸造協会誌
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清酒酵母きょうかい6号及び7号からの新規な高アルコール耐性自然突然変異体の分離並びにそれらの醸造特性
村上 智子渡辺 守髙木 昌美末次-佐々木 春菜渡辺 大輔五島 徹也福田 央下飯 仁赤尾 健
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2021 年 116 巻 2 号 p. 111-124

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抄録

1.アルコール耐性に関する細胞内メカニズムの解析等への活用を目的として,K6及びK7を親株に用いて,自然突然変異による新規なアルコール耐性酵母の分離を試み,候補菌株の中から簡易アルコール耐性試験(スポットアッセイ)により,K6より8株(K6AT1-K6AT8),K7より5株(K7AT1-K7AT5)を選抜した。

2.急性ストレス試験により各菌株のアルコール耐性を評価したところ,K6AT1-K6AT8,K7AT1-K7AT4についてはアルコール耐性を獲得していることを確認したが,K7AT5についてはアルコール耐性を確認できなかった。簡易アルコール耐性試験(スポットアッセイ)時点より後に,菌株にアルコール耐性に対する新たな抑圧変異が生じたことで,アルコール耐性を失ったと考えられた。

3.ザイモリアーゼ耐性試験,キラートキシン耐性試験,浮遊密度分画試験については,多様な結果が得られたが,全体として親株よりも各耐性が高く,定常期の浮遊密度が大きいという傾向を示した。しかし,特にキラートキシン耐性において親株よりも低いケースも散見された。

4.清酒小仕込試験の結果,K7AT5以外の各菌株による製成酒では,親株と比較して,酸度が高い,アミノ酸度が低い,有機酸のうちリンゴ酸,コハク酸,乳酸の含量が高く,酢酸が低いといった特徴が認められた。K7AT5についても,発酵プロファイル,製成酒の組成において,親株と異なるものであった。また,味認識センサーの応答特性も,製成酒の組成を反映したものであった。

5.本研究で得られた菌株については,清酒酵母の高アルコール耐性機構の解析への寄与が期待される。またニーズによっては,新規のアルコール耐性酵母,あるいは主に有機酸組成に特徴のある酵母菌株としての活用が可能かもしれない。

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