日本釀造協會雜誌
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山廃酒母における微生物学的研究 (第9報)
麹の微生物と麹より単離した酵母の亜硝酸耐性
芦沢 長斎藤 孔男
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1965 年 60 巻 9 号 p. 803-807

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抄録

出麹のmicrofloraと製麹工程中の各菌群の動態を調査し, 更に麹より分離した酵母について亜硝酸耐性を試験して次の結果を得た。
1.出麹の細-菌はほとんど普遍的にMicrococcusが圧倒的優位を占め105~107/gであり, 乳醸菌数は102/g程度であった。酵母は酒造場によって種類も数も大きな差があったが, 一般に清酒酵母よりもTTC染色のPとWが多かった。
2.製麹工程中の菌群の動態を調査して蒸米は引込み後床もみ前に既に大量に汚染されることを知り, 蒸米に直接触れる帆布に重大な原因のあることを認めた。
3.単離菌株を床もみ時に添加してその動態を調査し, 製麹工程が細菌では乳酸菌よりもMicrococcusに, 酵母ではR酵母よりW酵母の増殖に適していることを認めた。
4.製麹工程後半で清酒酵母の生菌数はむしろ減少するが, この原因には温度条件だけでなく, 好気的状態から嫌気的状態に急激に移行するなどの, 製麹の複雑な環境が関与していることを認めた。
5.麹より単離した酵母の亜硝酸耐性はR酵母が強くP酵母とW酵母が弱かった。また硝酸塩を単一窒素源として利用できる酵母も酸性条件では亜硝酸によって強い生育阻害を受けた。

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