2006 年 101 巻 5 号 p. 324-347
平成17年の味噌の研究業績を見ると, 直接的な味噌に関わる研究成果が非常に少なくなっている。しかしながら, 味噌の食機能性等, 期待される研究成果が少なからず認められることが更なる味噌に関わる研究開発の発展に対する方向性と課題を示唆している。原材料と製造法, 製品や製品の品質のみならず, まだまだ研究を行わねばならぬ部分が残され, 手がつけられていない課題が多くあるようだ。消費者ニーズを考慮した, 味噌のあるべき姿を求めて, 新たな視点と技術による研究開発の進展が期待される。伝統から革新に至る発展と成果は, 世界的な広い視野からの研究開発によりもたらされよう。
食酢に関する研究報告数は, 例年130件程度であるが, 05年度は酢酸菌の酢酸耐性に関する非常に多くの遺伝子の特許が公開されたのは注目に値する。ただ, これだけ多くの遺伝子が酢酸耐性に関わっているとなると, 酢酸耐性そのものの定義が当然議論されることになろう。一方で, 酢酸発酵や酢酸菌の酵素に関する研究報告が例年よりかなり少なくなったのは, 研究が一段落したためか, 他方, 様々な食酢の製法開発が活発化しているのは, ここ数年の第二次食酢ブームに起因しているのかもしれず, 世の中の動きとの連動は興味深い。