日本醸造協会誌
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カプロン酸エチル高生産株を用いたリンゴ搾り粕からのフレーバーアルコール生産
村中 文人岩間 直子斉藤 知明殿内 暁夫赤田 辰治武田 潔
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2006 年 101 巻 9 号 p. 711-716

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抄録

カプロン酸エチル高生産酵母Sacckaromyces cereuisiae3703-7株はグルコース濃度15%培養温度25℃で培養した時カプロン酸エチル生成が最大であった。糖類ではグルコースよりはシュクロース, フルクトース基質の方がカプロン酸エチル生成が多かった。親株の3703株はカプロン酸エチル生成に対するグルコース濃度,培養温度の効果はほとんどなく, その生成量は3703-7株と比較して1/7-1/10であり, 低かった。これらの結果からフルクトース,グルコースとシュクロースを糖組成とするリンゴ搾り粕を原料として3703-7株をエタノール発酵することによりカプロン酸エチルや酢酸エチルの香気物質を生成することが示唆された。リンゴ搾り粕から糖濃度の異なる2種類の抽出液,×5抽出液(糖分6.4%を含む)および×1抽出液(糖分10.4%を含む)を調製し, 3703-7株を植菌し, 15℃ および25℃ で培養した。カプロン酸エチルは×1抽出液の方が多く生産された。×1抽出液で25℃8日間培養後, エタノールは5.23%生成され,カプロン酸エチル, 酢酸エチルと酢酸イソアミルはそれそれ3.12ppm, 7.13ppm, 0.45ppmであった。この発酵液の蒸留液はリンゴの香りに加えてカプロン酸エチルの甘い香りを有するエタノール32.3%のフレーバーアルコールであった。

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