日本醸造協会誌
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Zygosaccharomyces rouxiiの細胞表層構造
富田 実岩田 深也
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1990 年 85 巻 1 号 p. 51-56

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抄録

Z.rouxii ATCC52698の無塩培養菌体 (無塩菌体) と3M食塩添加培養菌体 (食塩菌体) を用いて酵素処理による表層成分の溶解性について比較検討し, 細胞表層構造の差異について考察した。
1. Pronase処理により食塩菌体から菌体乾物量の20%に相当するタンパク質と10%に相当する多糖類が溶解された。一方, 同処理による無塩菌体からの菌体成分の溶解は極めて少なかった。
2. Pronase処理により食塩菌体から溶解された多糖類はmannanと同定された。このmannanの平均分子量は200万以上であり, 分子内に2%のペプチドと0.24%のりんが含まれていた。ペプチド部分のアミノ酸組成中にはSer, Ala及びThrが非常に多く, この3種で全アミノ酸の約60%(モル比) を占めていた。
3. 全mannan含量は無塩菌体の方が食塩菌体よりも多いが, Pronase処理により溶解されたmannanの全mannan量に対する比率は無塩菌体で約10%, 食塩菌体で約90%であった。
4. Chitinase処理により無塩菌体の細胞壁標品から乾物1g当たり20mgのGlcNAcが遊離されたが, 食塩菌体からは全く遊離されなかった。
以上の結果から, 本菌の細胞表層マンナンータンパク質複合体及びchitin質の構造は無塩菌体と食塩菌体とで異なるものと推定した。

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