日本醸造協会誌
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粉末活性炭素添加による酵母の増殖促進及び香気成分の高濃度生成
糖化液を用いた香気の高い酒類の製造 (第4報)
福田 典雄平松 幹雄産本 弘之福崎 智司
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1995 年 90 巻 8 号 p. 641-645

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抄録

液化発酵において, 粉末活性炭素を添加することにより, 酵母の増殖が促進され香気成分生成縫が増加する現象の要囚について検討した。静置発酵において, 槽の高さ方向における溶存酸素 (DO), 溶存炭酸ガス (DCO2) および酵母濃度の分布を経時的に側定した。粉末炭による酸素の持ち込み量は相対的に少量であり, また, 添加, 無添加醪における, DO濃度の経時変化に差異は認められなかったことから, DOは粉末炭添加効果の重要な因子ではないと考えられた。一方, DCO2濃度には明確な差異が認められ, 炭酸ガスの生成が活発な発酵中期 (3~7日) を通して, 粉末炭添加醪の方が常に低い値を示した, 髪た, 無添加醪では, 槽の下部ほどDCO2濃度が高くなる濃度分布が明確に見られた。粉末炭添加醪における, 発酵中期の酵母の濃度分布は, 槽全体にほぼ均一であり分散性に優れていた。これに対して, 無添加醪では, 槽の下部に酵母が沈降する傾向が見られた。これは, 活発な炭酸ガスの発生に伴う発酵液の流動性に起因していると考えられた。全酵母数当たりの酢酸インアミル生成量は, 粉末炭添加によって約2.5倍増加した。以上の結果から, 粉末炭添加による酵母の増殖促進ならびに酢酸インアミル生成量の増加の重要な要因はDCO2濃度であることが確かめられた。

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