1998 年 93 巻 11 号 p. 897-904
古式泡盛製造過程で現在見られなくなったシー汁浸漬を沖縄県の泡盛製造場で調製し,シー汁から細菌,酵母を分離・同定し,その微生物相と各種酵素活性について検討した。
1.シー汁浸漬の2日目よりpHの低下が認められ,それにともない酸度,アミノ酸度が上昇した。10日目では酸度が5.5となり独特の酸臭が生じた。
2.シー汁中の有機酸は乳酸が(4484mg/l)と90%以上を占めており,酪酸(245mg/l),酢酸(185mg/l)が生成された。
3.シー汁から分離した細菌は好気性細菌としてBacillus subtilis,好気性酸生成細菌としてBacillus circulans,通性嫌気性酸生成細菌としてLeucomstoc mesenteroides,Lactobacillus bifermentans,Lactobacillus sake,嫌気性有胞子細菌としてClostridium beijerinkiiが同定された。また酵母としてSaccharomyces cereviciae,Candida humicolaが同定されたが糸状菌は分離されなかった。
4.シー汁中の微生物相は2日目には好気性細菌と好気性酸生成細菌が出現し,次いで通1生嫌気性酸生成細菌が現われ, 10日目には嫌気性有胞子細菌と酵母の存在が認められた。
5.シー汁中の酵素としては,α-アミラーゼやグルコアミラーゼが活性を示し,酸性プロテアーゼやセルラーゼの活性も認められることから,これらの酵素は微生物が生成し,原料米に作用することが推察された。
終わりに本研究を行うにあたり,実験にご協力いただきました伊藤史郎氏に深謝致します。