2024 年 15 巻 1 号 p. 19-26
自閉スペクトラム症(ASD)の子どもたちは,自己理解や他者理解の方法,相互コミュニケーションに特徴があり,社会適応に課題を抱えることがある.この課題への社会的処方箋として,Tanakaら(2020)は,参加型アートワークショップ(AWS)の効果に着目し,唾液中オキシトシンが生理的効果指標になり得る可能性を示した.本稿では,オンライン形式によるAWSを用いた神経内分泌学的反応の研究について,一部経過を報告する.粘土や描画など視覚的なアートを用いたオンラインでのAWSの前後と中盤に唾液を収集し,オキシトシンおよびコルチゾールの濃度を測定した.その結果,唾液オキシトシン濃度の上昇傾向と,コルチゾール濃度の低下傾向を捉えている.ASDにとってオンラインAWSへの参加は,少なくともストレスを減退させ,オンラインAWSの実施方法によって,オキシトシンの分泌が促進される可能性がある.