2025 年 16 巻 1 号 p. 64-69
免疫組織化学(Immunohistochemistry: IHC)は,抗原抗体反応を利用して,組織中に存在する特定の分子を可視化する技術である.形態学的構造を保持したまま,分子の空間的な局在情報を得られる点で,解剖学と分子生物学をつなぐ重要な手法とされている.神経科学,発達生物学,病理学,腫瘍学など幅広い分野において活用され,再現性の高い染色技術の習得は研究者・技術者にとって不可欠である.本講義では,IHC染色を正確かつ再現性高く実施するための基礎知識と手技を解説する.内容は,組織の摘出・固定から始まり,ブロック作製,切片作製,前処理(脱パラフィン・水和・抗原賦活化),抗体反応,検出に至るまで,工程ごとに体系的に紹介する.また,灌流固定のような高度な技術や,背景染色の軽減・非特異的反応の防止といったトラブルシューティングにも言及する.講義を通じて,受講者がIHCの原理を深く理解し,研究実践で即応できる技術を身につけることを目的とする.