臨床倫理
Online ISSN : 2435-0621
Print ISSN : 2187-6134
実践・事例報告
重症低血糖症の治療を拒否した終末期転移性肝腫瘍患者の1症例;その臨床倫理分析
~終末期患者と家族の全人的脆弱性に配慮したケアの重要性を巡って
中村 健児
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2025 年 13 巻 p. 31-36

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抄録

 終末期転移性肝腫瘍患者が重症低血糖症を併発し,意識レベル維持のために高カロリー輸液が必要となったが,患者が血糖補正中止を求め,倫理問題を考察する必要が生じ,倫理分析を行った。その結果,このような患者の治療中止要請に公平・公正(正義)をもって応答するためには,周囲の状況の厳密な評価とそれへの対応が必須であると考えるに至った。とくに,患者の身体・心理的苦痛の解決だけでなく,顕在的な患者の意向と拮抗する潜在的な心理社会的(実存的)問題(とくに,家族を含めた周囲の人達の意思と,彼らとの関係性)をも明らかにし,それを多職種専門職チームアプローチによって特定・分析・解決するために最善を尽くすことが必要である。なぜなら,真の患者(時には家族)の意向を知って自律性を尊重し,医療の恩恵享受の公平性(正義)を保つためには,終末期患者(時には家族)の全人的(身体・心理社会・実存的)脆弱性への配慮が必須だからである。

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