抄録
発声や構音に障碍を持つ音声障碍者の音声は明瞭度の低下により,日常会話に支障をきたすという問題がある.我々はこの状況を改善するために音声障碍者のための発話機能補償システムの研究を行なっている.提案システムでは,障碍者音声から抽出した不完全な音声特徴量を健常者音声に近づくよう構音変形し,フォルマント分析合成手法をベースとしたリアルタイム処理により明瞭度を改善した音声を得るという方式を用いている.本稿では同システム中の,話者の個人性による変動を受けない母音構音空間において構音変形処理を行うアルゴリズムを提案し,障碍者音声の模擬的状況を想定し,実際に構音変形を試みる.