抄録
本論文では、マルチチャネルNMFにおける初期値選択法について検討する。マルチチャネルNMFでは初期値によって大きく分離性能が異なるという問題があった。そこで、初期値の選択法として位相差を用いた方法と対数尤度を用いた方法について検討を行う。前者の方法は、各方向の音源が持つ位相差は互いに独立であるという仮定に基づき選択を行うものである。後者の方法は、分離性能の高いものほど尤度も高くなるという仮定に基づいて選択を行うものである。4種類の楽器音混合データに対して音源分離実験を行った結果、2つの方法で共に平均的な分離性能の向上が見られた。特に、対数尤度を用いた方法ではばらつきが減少することが分かった。