抄録
資質・能力を育成する歴史教育の実現には,伝統的な歴史教育が依拠しがちであった内容の論理に代えて,教育の論理を採用することが重要である。つまり「何を」教えるかより,「何のために」「どのように」教えるのかを重視するのである。その点で,高校地理歴史科の新設科目「歴史総合」は注目に値する。なぜなら,21世紀の市民に求められる思考力・判断力・表現力等を育成するために,現代的な諸課題の形成に関わる近現代の歴史を考察することが科目の趣旨とされるからである。だが,この趣旨を生かすためには,教育の論理に依拠した近現代史の内容構成が必要になる。そこで,筆者は①現代的な諸課題をカリキュラムのスコープに設定し,②近代化・大衆化・グローバル化という歴史の転換に着目し,過去と現在をリンクしながら近現代史を探究する「歴史総合」の内容構成案を提起する。それを通じて歴史教育による資質・能力育成の可能性を探りたい。