日本教科教育学会誌
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戦後漢字教育実践史研究・寸描
― 教育雑誌『ひと』誌上の漢字教育実践を中心に ―
香川 七海
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2017 年 39 巻 4 号 p. 45-58

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抄録
本稿は,教育雑誌『ひと』誌上の漢字教育実践の概要と変遷について論究をするものである。『ひと』が創刊された1970年代以前,民間教育研究運動のなかでは,「反動」と見なされた国語教育政策の動向に対して,体系的な漢字教育実践の必要性が認識されていた。そうした状況を背景に,『ひと』においても,漢字教育実践の体系化をはかる自主編成が試みられることとなる。70年代から80年代前半にかけては,岡田進が藤堂明保の字源研究を援用し,80年代後半から90年代にかけては,宮下久夫グループが白川静の字源研究を援用して漢字教育実践の体系化を試みた。初期の岡田の実践は,限定符をもとにした漢字の分類方法(=「漢字家族」)を中心とするものであったが,そこには,問題点も内包されていた。他方,後期の宮下らの実践は,従来の漢字教育の知見を下敷きにしつつも,白川の字源研究を援用することで,その問題点を克服することが可能となるものであった。
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© 2017 日本教科教育学会
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