抄録
本研究は,映像認識における子どもの論理の構成と展開に関する研究として位置づけられる。今回は,特に理科放送プログラムの視聴後の子どもの再生活動の論理の構成と展開について考察することを目的とした。そこで,子どもに理科番組の視聴を行わせ,次に番組をキーシーンを中心に再編集し,再度提示した。キーシーンは7場面あり,各キーシーン毎にその後の展開を聞く質問を行った。子どもの回答の分析の結果,次のこと明らかになった。1)各場面において再生が可能であった子どもの人数及び再生された場面の数はほぼ定であった。2)再生された場面は,全て質問が行われた場面以降のものであった。3)再生された場面には,頻繁に再生されるものと,ほとんど再生されないものが存在した。4)頻繁に再生された場面は,番組の論理展開に重要な関連を持っているものであった。映像認識において,番組の持つ論理構造を忠実に再現できることはそれほど重要なことではなく,むしろ再生の不完全な部分にこそ子どもの豊かな発想への大きな可能性か秘められていると考えられる。