日本作物学会紀事
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栽培
黒ボク土の水田転換畑におけるチゼルプラウ耕が土壌環境およびトウモロコシの窒素吸収に及ぼす影響
篠遠 善哉松波 寿典大谷 隆二冠 秀昭丸山 幸夫
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2018 年 87 巻 2 号 p. 125-131

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抄録

黒ボク土の水田転換畑にて,チゼルプラウ耕が土壌環境と作物生育に及ぼす影響を明らかにするため,試験1で土壌の物理性・化学性,およびトウモロコシの窒素吸収量を,試験2で土壌中の肥料分布をロータリ耕と比較した.試験1では5月下旬にロータリ耕(ロータリ区)とチゼルプラウ耕(プラウ区)で耕起した圃場にトウモロコシ2品種を播種した.土壌貫入抵抗値は,深さ0–5 cmでは両耕起区とも同程度であったが,プラウ区では深さ5 cm以深の土壌貫入抵抗値が急激に増加した.特に,深さ10–20 cmの土壌貫入抵抗値はロータリ区よりプラウ区で著しく高かった.また,深さ10 cmおよび20 cmの気相率はロータリ区よりプラウ区で低く,固相率はロータリ区よりプラウ区で高かった.土壌化学性については,第6葉期の土壌深さ0–5 cmにおいて,硝酸態窒素がロータリ区よりプラウ区で有意に多く,有効態リン酸および交換性カリも多い傾向であったが,成熟期には耕起法による差はみられなかった.また,トウモロコシの窒素吸収量に耕起法による有意な差はみられなかった.試験2ではロータリ区と比較してプラウ区では表層の肥料分布割合が高く,深さ0–10 cmに肥料の95%以上が分布していた.以上のことから,チゼルプラウ耕では,深さ5–20 cmの土壌が硬く,深さ10,20 cm気相率は低いが,深さ0–10 cmに肥料が多く分布するため,生育初期における表層の養分供給能が優れることが示された.また,水田転換畑におけるチゼルプラウ耕は窒素吸収量をロータリ耕と同程度に維持ししつつ,高速作業を可能にする耕起法であると考えられる.

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