日本作物学会紀事
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研究・技術ノート
熊本地震で生じた農地の不陸が2016年度のダイズの生育および収量に及ぼした影響
野見山 綾介松尾 直樹脇山 恭行柴田 昇平榮 誠三郎石塚 直樹岩﨑 亘典坂本 利弘
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キーワード: 熊本地震, 湿害, ダイズ, 不陸
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2018 年 87 巻 2 号 p. 176-182

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抄録

熊本地震により熊本市東区秋津地区にある54 aの圃場では土面の凹凸(不陸)が波板状に生じたが,均平化することができずにダイズ品種フクユタカが2016年7月中旬に作付けされた.そこで地震で生じた不陸が2016年度のダイズ栽培に及ぼす影響に関する知見を得るために,土面の凹部と凸部で栽培されたダイズの生育・収量調査を実施した.その結果,7月下旬から8月までの栄養成長期の降水量は非常に少なかったため,収穫本数だけでなく,主茎長,主茎節数および分枝数など基本栄養成長量に関しては,土面の凹凸で有意な差は認められなかった.しかし降水量が非常に多かった9月以降の生殖成長期には,凹部において葉色の低下や日中の葉温上昇が認められたことから,根粒の窒素固定能や根の吸水能が低下していた可能性が推察された.そして,収穫時において凹部では青立ち個体が多発し,収量は稔実莢数の減少を通して半減した.以上より,熊本地震により著しい不陸が発生した圃場において,凹部では降水が多かった生殖成長期に湿害を受け,窒素供給能や吸水能が低下し,稔実莢数の減少に伴い著しく減収し,青立ち個体も多発する現象が認められた.今後,不陸が生じた圃場で持続的に営農するためには,まず均平化を図ることが望まれるが,やむを得ず不陸が生じたまま栽培する場合は,湿害対策を講じるとともに収穫適期や作業性などにも留意し,不陸に伴う減収を軽減することが重要であると考えられる.

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