摘芯は,倒伏の抑制や分枝の成長促進に効果的な栽培管理法である.本研究では,異なる生育ステージのエゴマに摘芯を行い,その後の生育や収量を比較することで,十勝地方のエゴマ栽培における摘芯の有効性の評価と処理を行う適切な生育ステージの検討を行った.エゴマ在来品種「北海道在来」を栽培した圃場を4区画に分け,それぞれを摘芯を行わない無処理区,摘芯を本葉が第8節,第10節まで展開した時,および主茎で花芽分化が始まった時に行う,V8区,V10区, R区とした.無処理区と比較し,V8区とV10区では一次分枝が少ないものの,分枝1本当たりの花序が多かった.これは,摘芯によって頂芽優勢が失われたことや,分枝当たりの資源配分量が増加したことに起因すると考えられる.無処理区とV10区の間には,総小花数に大きな差が認められなかった.また,無処理区と比較し,V8区とV10区では主茎が短くかつ頂部に花序を形成しないことから倒伏の程度が低かった.一方で,無処理区とR区の間には,株の草型や倒伏の程度に大きな差が認められなかった.子実収量と油収量については試験区間に大きな差が認められなかったが,機械収穫を行う実際の生産現場では,倒伏の程度が高かった無処理区とR区の値が収穫ロスにより本研究の結果より低くなると推測される.摘芯は十勝地方におけるエゴマの生産の安定化に有効であり,分枝の発達による花序数の維持や倒伏の軽減の面から,摘芯を行う最適な生育段階は主茎の本葉が10節まで展開した時と結論づけられる.