日本作物学会紀事
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研究・技術ノート
実規模栽培におけるダイズに対するTwin-row栽培が生育・収量および受光態勢に及ぼす影響
松井 俊樹佐々木 壱黒瀨 大地逢坂 祐介飛谷 淳一義平 大樹
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2024 年 93 巻 4 号 p. 294-304

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抄録

ダイズ品種「ゆきぴりか」を供試し,2ヶ年の条間75 cm,幅条間20 cmとするTwin-row栽培 (TR) を,専用播種機を用いて実施し,条間75 cmの慣行栽培 (CR) と比較した.TRの収量は2021,2022年それぞれ24%,22%CRに比べて多収であった.このTRの多収は,収量構成要素からみると,分枝節数の増加にともなう莢数の増加によるものであった.また,受光態勢からみると,栄養成長期から着莢始期 (R3) までの植被率の上昇による積算受光量の増加と,R3以降の生殖成長後期において吸光係数が低く群落内部に日射が透過しやすい良好な葉群構造を示すことに起因すると考えられた.積算受光量の増加は同期間の個体群成長速度の上昇,生殖成長後期の受光態勢は,同期間の純同化率の上昇を通して,地上部乾物重の増加に関与したと考えられた.さらに,生育期間全体の日射利用効率はTRがCRに比べて高く,この日射利用効率の上昇は地上部乾物重の増加に結びつき,収穫指数に栽植様式間の差異がみられないことからTRの多収をもたらしたと考えられる.これらの傾向は,多照に経過し紡錘型の葉群構造を示し,分枝収量割合の高い多収年次の2021年においても,高温やや寡照で逆三角形型の葉群構造を呈した分枝収量割合の低い低収年次の2022年においても共通してみられた.以上より,北海道中央部の実規模栽培圃場においても,TRの増収効果が確認でき,その増収は栄養成長後期および生殖成長期初期における受光量の増加と生殖成長中期から後期の良好な受光態勢の両面によってもたらされると推察した.

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