愛知県内の中山間地である設楽町では地域在来種によるエゴマの栽培が行われており,その子実は五平餅のたれや油に加工後地元の道の駅で販売され,これらを目当てとした来客もあり好評を得ている.このように,中山間地へ人を呼びこむことができるエゴマは地域資源として重要品目であるが,生産者の高齢化とともにその生産量は減少している.また,この地域で栽培される在来系統は7月上旬に定植され10月下旬から11月上旬に収穫時期が集中するため,同一生産者による栽培面積の拡大が不可能であり,このことも生産量が確保できない一因となっている.さらに,10月に早霜に遭う場合があり,子実収量や品質の低下を招いている.本研究では本地域での生産量の安定確保を図るため,在来種「名倉」の定植時期が生育,開花,収穫時期および収量に及ぼす影響を2017年と2018年に調査し,収穫作業の分散可能性を検討した.あわせて名倉種と極早生系統を交雑して得られた後代系統についても同様に調査を行った.その結果,在来種「名倉」は定植時期が遅れるほど生育は劣り,定植時期を変えても開花時期は9月中下旬,収穫時期は10月下旬から11月上旬と変わらず収穫作業の分散はできなかった.一方,交雑後代系統は定植時期に応じて開花や収穫時期も変動した.このことから,育種的改良により定植時期を変えることで収穫時期を調整できる可能性があり,育成系統と在来系統の計画的な作付けにより,本地域の生産量を増加できる可能性が考えられた.