日本作物学会紀事
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イネ籾表面構造の形成, 成熟過程における観察
兼子 真片岡 勝美武田 哲
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キーワード: 気孔, 水分代謝, 表面構造, 毛茸,
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1988 年 57 巻 2 号 p. 311-315

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抄録

イネ籾の表面は複雑な構造を呈するところから, 成熟籾での観察では十分解明されない部分があった. そこで, 籾の形成期から収穫期にわたり試料を採取し, 走査電子顕微鏡により観察した. 内外穎の外側表皮では, 大毛の伸長や小毛の分化は出穂前15日頃に始まる. 円形突起は徐々に隆起して来るが, 不均一な厚壁化により出穂前5日頃までは表面に縞模様が見られた. この外側表皮には気孔状の細胞が外穎の鉤合部付近と内, 外穎の先端部あるいは芝に観察された. これらの細胞は形態上あるいは密度から気孔と断定した. 鉤合部付近の気孔は1~2列あり, その列には小毛はほとんど見られない. 内側表皮では, 気孔は維管束付近に小毛とともに観察され, 側脈(外穎), 中央脈の部分では気孔と小毛は同じ細胞列に混在する. 鉤合部付近では気孔と小毛の列は異なり, 気孔は鉤合部寄りに位置する. これらの気孔や小毛は籾の水分代謝に大きく関係すると思われる.

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