日本作物学会紀事
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バングラデシュ低地におけるイネ基幹作付体系の村落レベルの研究 : 第1報 ハオールおよびビール地帯における作付様式とその分布
セリム ムハマッド安藤 和雄内田 晴夫田中 耕司
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1990 年 59 巻 3 号 p. 518-527

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抄録

バングラデシュ低地に位置する2カ村でイネを基幹とする作付体系の調査を行った。一つはキショルゴンジ県の広大な低地, ハオール地帯縁辺部に位置するジョワール村で, もう一つはマイメンシン県に散在する凹地 (ビール) に面するタカルビティ村である。調査にあたっては, 両村のトポシークェンスと作付様式の分布との関係を詳しく分析するために, 村人による土地分類に依拠しつつ, 村の全域を標高に応じて細かい土地単位に区分した。また, ボロ, アウス, アマンの3作期に栽培される作物の全筆調査を実施し, あわせて1986年から88年にかけて水文条件の季節変化を観察・測定した。両村に共通して14タイプの作付様式が認められ, うち10タイプがイネ基幹の様式であった。作付様式の構成や分布は, 両村で大きな違いは認められず, その分布はトポシークェンス, 従って水文条件の季節変化に密接に関連して成立していることが明らかになった。ジョワール村では, アウスイネ 基幹およびアマンイネ基幹の作付様式はカンダイラ・ジョミと呼ばれる高位部の土地に分布し, ボロイネ単作はシャイル・ジョミあるいはボロ・ジョミと呼ばれる低位部の土地での優占的な作付様式であった。ボロイネ基幹の作付様式は, 浅管井戸などの近代的な灌漑方式の導入後, 高位部低地や低位部高地に拡大している。作付様式の同様な分布パターンは, タカルビティ村でも認められた。以上より, 現行の作付様式はバングラデシュ低地特有の条件に適合した, 村人の環境への適応の結果であることが明らかにされた。

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