日本作物学会紀事
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熱ストレスがマメ科牧草サイラトロ(Macroptilium atropurpureum cv. Siratro)のアセチルコリン含量ならびに同分解酵素活性におよぼす影響
桃木 芳枝桃木 徳博
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1992 年 61 巻 1 号 p. 112-118

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抄録
本報では, マメ科牧草のサイラトロ(Macroptilium atropurpureum cv. Siratro)を材料として熱ストレス後の葉の萎凋現象に伴うアセチルコリン分解酵素の活性およびACh含量の変化, ならびに熱ストレス後植物体から分離した第1葉枕を伴った複葉にACh, K+またはCa2+を外生的に与え, その影響を検討した. 第1葉枕では1mg当り乾燥重で75 nMのAChを分解する活性が, また, 第2葉枕では1 mg当り乾燥重で46 nMのAChを分解する活性が認められた. さらに, アセチルコリン分解酵素活性はネオスチグミンによって約96%抑制された. 葉枕の酵素活性は葉, 葉身, 茎, 根なビの他の器官に比べ, 4~12倍高く, 熱ス卜レスにより酵素活性は第1葉枕で約4倍, 第2葉枕では約2倍にそれぞれ増加した. 第1および第2葉枕のACh含量もストレス後3分以内に著しく変化した. しかも, 熱ストレスに伴うACh分解酵素とACh含量変化は葉の萎凋現象と関係あることが認められた. さらに, AChとK+またはCa2+の混合溶液は, 熱処理した後, 植物体より分離した第1葉枕を伴った複葉の萎凋の回復を著しく速めた. これらの結果より, AChが葉枕部位においてイオンチャンネルの開閉によって規制されるイオンまたはホルモンなどの物質の流入・流出を調節している可能性のあることが示唆された.
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