2024 年 24 巻 9 号 p. 407-412
β-コングリシニンは大豆タンパク質を構成するタンパク質の一つで,大豆タンパク質全体よりも明確に体脂肪低減作用および肝臓トリグリセリド濃度低下作用を示すことが知られている。β-コングリシニンはラットの血清アディポネクチン濃度を上昇させることも知られている。アディポネクチンは脂肪細胞から分泌されるアディポサイトカインの一つで,脂質代謝を改善し,インスリン感受性を高め,血圧を抑制するなど多くの作用を示すことが知られている。そのため,β-コングリシニンを摂取することでもこれらの多様な機能が発揮される可能性がある。肥満モデル動物であるOLETFラットを用いた摂食試験では,β-コングリシニンは,対照のカゼインに比べ,腸間膜脂肪組織重量および肝臓トリグリセリド濃度を低下させ,インスリンへの応答を改善した。高血圧自然発症ラットを用いた摂食試験では,β-コングリシニンはカゼインに比べ,血圧(収縮期および拡張期)の上昇を抑制した。そしていずれの場合も,β-コングリシニンの摂取により血中のアディポネクチン濃度は上昇した。これらの知見は,β-コングリシニンが多様な生理機能を有し,メタボリックシンドロームの改善に有益な食品成分となり得ることを示唆している。