抄録
コムギは湿潤土壌では浅い根系, 乾燥土壌では深い根系を形成するといわれるが, このような生長制御の機構は不明である. そこで, 根の屈地性に及ほす培地の水ポテンシャルの影響を調べた. ポリエチレングリコール(PEG-6000)を添加して水ポテンシャルを低下させた寒天培地にミナミノコムギ(通常の根伸長角度:小)と農林58号(同:大)の発芽種子を初生種子根が水平になるような角度で置床した. 20℃, 暗黒下で2日間培養した後に水平面からの伸長角度を測定したところ, -0.05MPa以下ではミナミノコムギの根の伸長角度が大きくなった. また, 含水量を調節してpF2.7 (-0.05MPa)としたバーミキュライト培地でもミナミノコムギの伸長角度は大きかった. そこで, 農林登録133品種を用い, 寒天培地で0及び-0.05MPaにおける伸長角度を比較したところ, ミナミノコムギ他50品種で水ポテンシャルの低下に伴う伸長角度の増加が観察された.