日本作物学会紀事
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暖地水田における地力窒素発現パターンと施肥の診断 : 第1報 地力窒素の発現が暖地水稲ニシホマレ, ヒノヒカリの生育・収量に及ぼす影響
山本 富三田中 浩平角重 和浩
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1992 年 61 巻 3 号 p. 369-374

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抄録
地域や肥沃度が異なる水田で, 地力窒素の発現が暖地水稲の生育や収量に及ぼす影響と水田土壌の地力窒素レベルに応じた適正な施肥量について検討した. まず, 速度論的方法を適用し, 水稲生育期間中の地力窒素発現量の推定を行った結果, 地域間で著しく異なり, また同じ地域内でも地力増強程度の違いにより10a当たり5kg前後も異なった. 窒素無施用区の水稲窒素吸収量を水稲による地力窒素吸収量の指標として, 地力窒素発現量の推定値と比較すると, 発現量に対する吸収量の割合はほぼ7~8割であった. 基準量を施肥した条件下で, 地力窒素吸収量と水稲ニシホマレの収量との関係についてみると, ニシホマレの収量は地力窒素の吸収量が10a当たり8kgまでは, 地力窒素量に応じて高くなる傾向にある. しかし, さらに多くなリ9kg近くになると収量は頭打ちとなり, 稲体中の窒素量は増えるが, 玄米生産に結びつかず, 過剰分に相当する窒素の吸収はむだであることから, 施肥量を減肥してよいと判断された. 良食味品種ヒノヒカりは地力窒素の影響を受けやすく, 施肥区の収量は地力窒素吸収量が10a当たリ8kg近くで頭打ちとなるのがみられた. また, 地力窒素吸収量と基肥量との関係についてみると, 地力窒素吸収量が少ない水田では基肥量として10a当たリ6kg程度が必要であるが, 地力窒素量が7~8kgの圃場では4.5kg程度が適量であり, 8kg以上ではさらに減肥が必要であった.
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