抄録
近年,ガソリンや有機溶剤等のNon-Aqueous Phase Liquids (NAPL)による土壌•地下水汚染が広範化し,Partitioning Interwell Tracer Test (PITT)という残留性のNAPL体積の推定手法が注目されてきた。PITTにおけるNAPL体積の推定は,NAPLへ分配したトレーサーの遅延の解析というクロマトグラフの確立された原理を用いており,トレーサーのNAPLへの分配は平衡状態であると仮定される。しかし実際には分配平衡が成立せず,NAPL体積の推定精度が低い場合がある。本研究では,卜レーサー流速の違いがPITTによるNAPL体積の推定精度へ与える影響を調べるために室内カラム実験を行った。その結果,トレーサー流速の減少とともにNAPL体積の推定精度が向上する傾向が確認された。また破過曲線の形状差から,流速が小さいと分配トレーサーのTCEへの分配が生じやすいが,流速が大きいと分配が平衡に達しにくかったために推定精度が低下したことが考えられた。