抄録
ダイズの収量成立過程を発育形態的な観点から解析するため, 有限伸育型品種 (エンレイ, タマホマレ) と無限伸育型品種 (Harosoy) を用いて花房次位ごとの着英率と子実肥大の経過を明らかにした. 調査は主茎の第4, 7, 10, 13および最上位節について行ない, 以下のような結果を得た. いずれの品種とも着莢率と子実乾物重は花房次位が高まるにつれて低下したが, 一莢内粒数は花房次位間に一定の傾向は認められなかった. 高次の花房で子実乾物重が低下したのは, 高次の花房ほど開花が遅くなり, 肥大期間が短くなるためと思われた. また, 2次花房の複葉は子実の生長を助長したが, 着莢には影響をおよぼさなかった. 有限伸育型品種の最上位節では0次花房よリ1次花房のほうが子実乾物重, 乾物蓄積率(RDA)とも大きかったが, これは0次花房は1次花房に比べ英数が多いため同化産物の競合がより著しいためと思われた. 以上のように, ダイズでは伸育型の相違にかかわらず, 着莢率, 子実乾物重のいずれもが低次な花房ほど大きくなることが明らかにされた. したがってダイズの収量は低次な花房に由来する子実の割合が高く, これらの子実の稔実の良否が収量に大きく影響するものと推察される.