日本作物学会紀事
Online ISSN : 1349-0990
Print ISSN : 0011-1848
ISSN-L : 0011-1848
低土壌水分条件におけるダイズの乾物生産と根系発達の品種間の相違
飛田 有支平沢 正石原 邦
著者情報
ジャーナル フリー

1995 年 64 巻 3 号 p. 573-580

詳細
抄録
前報において, 生態型, 伸育型が等しくても品種によって土壌水分の低下に伴う乾物重や子実重の減少程度が異なり, この相違には根群の発達程度の相違が関係していることが推察された. この点をさらに詳しく検討するため, エンレイとタチナガハを土壌水分の減少する条件で個体群として生育させた. タチナガハはエンレイに比べて低土壌水分条件において登熟期間の日中の葉の木部の水ポテンシャルが高く, 拡散抵抗が低く維持され, その結果, 純同化率(NAR)の減少程度が小さいことによって, 乾物生産と子実重の減少程度が小さいという, 前報と同様の結果が個体群として生育させた時にも得られた. さらにタチナガハはエンレイに比べて, 登熟期の低土壌水分条件で葉の老化に伴う光合成速度の減少が小さく, これもタチナガハのNARの減少が小さいことに関係していた. 低土壌水分条件では, コアサンプリング法で測定した根長密度, ミニリゾトロン法で測定した根長のいずれもタチナガハはエンレイに比べて大きく, 両品種の差は土壌の深層で顕著であった. 土壌水分の減少量から推定した吸水量は土壌の深層でタチナガハで大きく, 土壌水分が減少するとタチナガハはエンレイに比べて根系が土壌深くに密に良く発達する性質をもつことが明らかとなった. 以上のことから, 低土壌水分条件で認められた地上部の生理的性質の両品種の相違は, このような根系の発達の相違によってもたらされたものと考えられた.
著者関連情報
© 日本作物学会
前の記事 次の記事
feedback
Top