日本作物学会紀事
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イネの穂および小穂の形成に及ぼす塩化ナトリウムの影響 : 第2報 穂の発育形態について
崔 亨吉武岡 洋治和田 富吉
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1995 年 64 巻 3 号 p. 593-600

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抄録
イネの塩に対する反応を発育形態学的見地から研究するため, イネの穂と小穂の形成への塩化ナトリウム処理の影響を調査した. 本報の実験材料と調製は前報と同様である. 処理塩濃度の増加に伴い, 枝梗と小穂の分化数が減少し, 分化した枝梗と小穂でも, 生長の減退したものが増加した. このため処理塩濃度が高くなるにつれて, 一穂当たりの一次および二次枝梗および籾の数がいずれも減少した. また塩濃度の上昇により稔実歩合も低下した. 塩処理により穂および小穂には, 形態的異常が多様に発生した. 例えば, 一次枝梗の輪生と双生, 穂最上位の一次枝梗の異常伸長, 止葉の糸状化, 無芒品種の芒生化, 外穎と内穎の畸形化, 小穂の半透明化および苞毛の脆弱化などが認められた. 品種により一つの穂内の退化一次枝梗と正常な一次枝梗の大きさの差が大きい事例やほとんど差のないものが見られた. 以上の結果をもとに, 塩の影響と他の不良環境による影響とを比較したところ, 不良環境要因が異なってもイネの穂および小穂の形態的変異には共通性のあることが認められた. これらの環境諸条件に反応する穂や小穂の形態形成過程について考察した.
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