抄録
ダイズ品種エンレイから作出された根粒超多量着生変異体En6500は,根粒を多量に着生するが,生長速度が低いとされている.本研究では,En6500における根粒着生特性および植物体の生長特性を調べ,その生長速度が低い原因を探ろうとした.根粒着生特性については,まず,植物1個体当たりの根粒乾物重は,En6500がエンレイを上回っていた.それは,根粒1粒重が大きいことによるのではなく,根粒数が多いことによるものであった.さらに,単位根乾物重当たり根粒乾物重は,En6500がエンレイに比べてはるかに大きく,同じ乾物重で維持している根粒が,En6500で過剰となっていることが示唆された.次に生長特性を調べた.最大葉面積期における相対生長率は,En6500がエンレイを下回っていた.それは主に純同化率が低いことによるものであった.主茎葉の光合成速度もEn6500の方がエンレイよりも低く,En6500の純同化率の低さを裏付けていた.さらに,En6500では,葉への窒素分配割合が小さく,また,その窒素が光合成に利用される効率も低かった.その結果,窒素増加量に対する乾物増加量,すなわち窒素利用効率(NUE)は,En6500の方がエンレイよりも低くなっていた.これらのことから,En6500では,NUEが低く,そのことが根粒を多量に着生しても生長に結びつかない一つの原因となっていると考えられた.