日本作物学会紀事
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大区画水田における田面の高低が直播水稲の初期生育と分げつに及ぼす影響(栽培)
佐々木 良治柴田 洋一鳥山 和伸
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2002 年 71 巻 3 号 p. 308-316

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抄録
水田内の田面の高低が,直播水稲の初期生育に及ぼす影響を3ヶ年調査した.供試圃場(1ha)は,平均標高±5cm以内に98%以上の地点が,±2.5cm以内にも89%以上の地点が含まれ良好な均平度であった.草丈は田面の高低の影響を受けやすく,平均標高±3cmないし±2cm以内の地点であっても田面の標高と負の相関関係を示した.分げつは低位節ほど出現率が低く,年次間では1999年が低い傾向を示した.1998年は平均2.5cmの水深であったが,田面の高低の影響は第2,3節分げつ(T2,T3)にとどまった.一方,平均5.9cmの水深であった1999年は,第3,4節分げつ(T3,T4)であっても田面の高低の影響を受けることが多く,平均標高±3cmないし±2cm以内でも田面が低い地点ほど分げつ出現率は低かった.ただし,田面の標高と分げつ出現率との相関係数は有意の場合でも0.338~0.664であったことから,他の要因を検討したところ,湛水開始時の葉齢のわずかな差異が関与したと推察された.次に,T2やT3の出現率の中央値で全地点を2分し,苗立密度と個体当たり最高茎数との回帰式を比較したところ,出現率が高いグループであっても最高茎数は多い傾向を示さなかった.また,両年ともT2が出現した個体であっても,T2の第1節からの2次分げつT21が出現した個体割合は0~26%と低かった.これらのことから,T2やT3由来の2次分げつの出現が抑制される傾向にあったと推測された.
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