抄録
水田内の田面の高低が,直播水稲の初期生育に及ぼす影響を3ヶ年調査した.供試圃場(1ha)は,平均標高±5cm以内に98%以上の地点が,±2.5cm以内にも89%以上の地点が含まれ良好な均平度であった.草丈は田面の高低の影響を受けやすく,平均標高±3cmないし±2cm以内の地点であっても田面の標高と負の相関関係を示した.分げつは低位節ほど出現率が低く,年次間では1999年が低い傾向を示した.1998年は平均2.5cmの水深であったが,田面の高低の影響は第2,3節分げつ(T2,T3)にとどまった.一方,平均5.9cmの水深であった1999年は,第3,4節分げつ(T3,T4)であっても田面の高低の影響を受けることが多く,平均標高±3cmないし±2cm以内でも田面が低い地点ほど分げつ出現率は低かった.ただし,田面の標高と分げつ出現率との相関係数は有意の場合でも0.338~0.664であったことから,他の要因を検討したところ,湛水開始時の葉齢のわずかな差異が関与したと推察された.次に,T2やT3の出現率の中央値で全地点を2分し,苗立密度と個体当たり最高茎数との回帰式を比較したところ,出現率が高いグループであっても最高茎数は多い傾向を示さなかった.また,両年ともT2が出現した個体であっても,T2の第1節からの2次分げつT21が出現した個体割合は0~26%と低かった.これらのことから,T2やT3由来の2次分げつの出現が抑制される傾向にあったと推測された.